父とドライブをした

僕は助手席に座っていた
時間は何時ぐらいだろう
空は薄暗く白く濁っていた
季節は秋だということは分かった
視界に入る山道にシアンは少ない

地元の景色が一望出来るような高さまで上がり
大きなカーブでそれを見た

ストレートでは何千何万の赤トンボが目前に迫ってくる
フロントガラスをなぞるようにすれ違う
ああ昔はこうだったな
と思い出した

景色は殺風景になり
硫黄の匂いが立ち込めた

窓を閉め
ガラス越しから標高2000mの世界を見た
ストイックな高山植物があちらこちらに岩場から顔を覗かせている

遠くにもくもくと黄色の煙が上がる
あれが硫黄の原因だ

しばらく進むと
辺りは雪に覆われていた

車を停め山道を歩いた
父は後ろにしっかりついて歩けと言った

少しでも脇に足を踏み出したら
柔らかい雪は崩れて深い底に転落するだろう
父でもきっと助けることはできない
ビクついて歩く僕を黒々とした針葉樹林は圧迫する
視界のすべてを父の背中で埋めるようにして歩く

歩くことに慣れ始めると
急に道が拓けて山の合間から自分の故郷を一望することが出来た

父はコーヒーの入った魔法瓶を取り出した
紙コップに並々と注いでもらったけども
猫舌の僕はすぐには飲めなかった
父は足元の綺麗な雪を少しつまんで紙コップに落とした

これでお前も飲めるだろう
と言った

砂糖は入っていなかった

あれから17年
過去を今日の夢がなぞった

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